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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1332号 判決 1949年12月27日

被告人

夏目貫一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人山田茂三の控訴趣意は末尾添付別紙記載の通りである。

控訴趣意一点について。

本件記録中司法警察員代理原田藤四郞の新城警察署司法警察員警部補内藤明宛「職務執行指揮について」と題する報告書の記載、原審第一回公判調書中証人藤田弘正同谷口辰男の供述記載、同第二回公判調書中証人天野登の供述記載を綜合すれば昭和二十三年三月七日午後十時半頃新城警察署へ、新城町字西新町ノ三喫茶店金太事加藤妙子方に於て被告人が酒を呑み器物を破損する等暴れて居るから即時取鎭に來て呉れとの電話申告により同夜の同署監督者代理司法警察員代理原田藤四郞は巡査谷口辰男、天野登を直に現場に出張せしめ、次いで巡査藤田弘正にも司法巡査として被告人夏目に対する現行犯逮捕を命じた。而して谷口、天野両巡査が現場に到着した際には右喫茶店の内部は額縁が毀れる等乱雜になつて居り、被告人は道路に出ていたが、尚ほ「此の家の親父は人を欺したので徹底的にやつてやる」と云うて居り、其処へ藤田巡査も駈け付け被告人を逮捕せんとしたのである事が認められる。さすれば斯る状況にあつては被告人は正に「現に罪を行い終つた者」というべく谷口、天野藤田巡査等が之を逮捕せんとしたのは所謂現行犯逮捕に該るものと認め得るから原判決が右巡査等の所爲を行務執行の行爲であると認定した事は相当であつて原判決には事実の誤認はない。所論は所詮独自の見解に立つて右三巡査の行爲を不法行爲であると主張するもので到底採用出來ない。

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